JMRA(特定非営利活動法人 日本民家再生協会)『民家 2014 No.90季刊夏』に掲載されました。

 

「里山の古民家を滞在型のオフィスに」

民家の活性化プロジェクトに取り組む美ら地球(ちゅらぼし)(代表 山田拓)の活動を本誌76号で紹介しました。山田さんたちは、2012年から地元、岐阜県飛騨市古川の建設会社・柳組と共同で「飛騨里山オフィスプロジェクト」と設立し、業者向けの空き家活用を進めております。IT環境が整えばどこでも仕事が可能な業種にとって、里山の環境は魅力的なようです。柳組代表の柳さんに活動の概要を紹介していただきます。

空き家の活用が地域の存続に不可欠

私は、古民家再生や建築業者の会社(柳組・創業107年)を営むかたわら、飛騨古川やその周辺地域で「まちづくり」や「景観保全」に取り組んできました。しかし、人口減少や高齢化の問題に加え、後継者不足により活動そのものの継承も危ぶまれていました。

そんななか、海外などでさまざまな経験を経たメンバーが運営する美ら地球が2009年から民家調査や空き古民家利用のテスト運用を始めました。それを契機に地元の方たちの空き家に対する意識改革や、農家や町家といった地域に点在する歴史ある古民家の利活用が少しずつ進みました。

3年がかりで地域の空き家の状況や付近の住民の意識を調査してきた山田さんから「地域住民の意思だけに任せていたら、飛騨古川も周辺農村部も消滅することはほぼ間違いないですよ」と具体的な数字や住民のことばを見せられた時は、ある程度想像していたものの近い将来の地域のイメージが頭に広がりました。

調査活動から如実に見えてきた空き家と高齢者世帯の顕著な増加を目の当たりにし、地域の存続には空き家勝つようにおける解を見出すことが、一番の近道ではないかと考えるようになりました。

家主の立場では、数年単位の長期スパンなら貸したいという意向はあるものの、若者の流出で地域内にこのような需要は皆無に等しく、また、放置すると雪下ろしなど定期的な管理作業は家主の負担として重くのしかかります。

空き家が増えると地域の衰退が目に見えるため、誰かがどんな形であっても家に滞在し、あかりを灯すことが関係者にとっては切望されるのではと考えました。

事業者を対象にしたプロジェクト

業態変革を目指す建設業を支援する県の政策強化のタイミングとも重なり、2年前(2012年)から美ら地球と共同で古民家の利活用の用途を広げようと、事業者を対象に「飛騨里山オフィスプロジェクト」を発足しました。美ら地球プロデュースと広報などを行い、私たち柳組は施行改修、管理、運営を担当しています。空き家を家主からお預かりし、1週間から数ヶ月単位で利用希望者が古民家を利用できるサービスです。

昨今はパソコン一台あればどこでも仕事ができる業種が増えていることから、インターネット環境を整え、プリンターやプロジェクターなどのオフィス設備をそろえました。

活動の様子が新聞に取り上げられたその日に、「一昨日、名古屋で家族会議があり、私が生まれ育った飛騨古川の家を解体することが決まりました。壊さずにいたら我が家もこういった使い方ができますか」と10年くらい空き家となっていた現里山オフィス「末広の家」の家主一家から連絡がきました。その後、里山オフィスとなった生家にお祭りなどのタイミングで里帰りされるようになり、温かい笑顔の家主との会話は勇気づけられるひと時でもあります。

半信半疑の事業スタートでしたが、時を経るごとに国内だけでなく世界中の都市部からの利用者が増え続けていることに、驚きをかんじつつもその可能性をさらに広げられないかと考えています。

空き家対策から定住人口確保へ

事業開始から3年目に入りますが、年々その反響がおおきくなっていることを感じています。2年目の利用状況は前年に比して3倍となりました。この流れを維持していけば、この事業単体でもある程度収益を期待することができ、また、地域の空き家の減少に寄与できるのではと考えるようになってきました。

空き家流通の促進と、最低限必要となる改修に関わる初期コストを誰が負担するかという推進上のふたつの課題が見えてきたので、これらの解を見出すことができれば、この流れを盤石化することができるのではと思います。

一昔前にも移住者が増えましたが、その多くはリタイヤ世代で、冬の厳しさなどを理由に数年で出ていかれるケースが多かったですが、里山オフィスの利用者は都市部から仕事を持ってくる20〜40歳代の若い世代が大半で、なかにはそのまま借りられる家を見つけて、移住した方も出てきました。

地域の本質的な課題である定住人口確保の施策として、もう少しこの活動を進めていきたいと考えています。

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